Love Step
雪哉がイスから立ち上がり頭を下げた時、カーテンの向こうから杏梨の声がした。



「ゆき……ちゃん?」



カーテンが開かれた。



簡易ベッドに寝かされた杏梨はこちらを見ていた。



「杏梨……」



頭に包帯は巻かれ、右手はギプスで固定され、痛々しかった。



ケガをしていない左手を雪哉は握った。



「ゆきちゃん、ごめんなさい……」



「何を謝るんだ!」



「だって……」


杏梨の瞳が潤んできた。



「患者を興奮させないで下さい これから病室に移します 1階の受付で入院手続きをお願いします」



看護師に言われ雪哉は杏梨の頬に触れ「何も心配しなくて良いんだ、手続きをしてくるよ」と言って出て行った。




救急治療室を出るとめぐみと琴美が近づいてきた。



「杏梨ちゃんの容態は!?」


めぐみが聞く。



「検査では今の所、頭部の異常は見られなかったよ 右手の骨折と全身打撲だけですんだ 入院の手続きをしてくる 2人とももう帰って良いよ 心配をかけたね、ありがとう」



めぐみはホッと安堵した。



安堵しなかったのは琴美だ。



悪運の強い子だこと。



「私は杏梨ちゃんに付いていてあげたいんです 女手があった方が良いと思いますし、いいですか?」と、琴美。



「今日はもう帰ったほうが良い 姉に来てもらうので心配はいりません ありがとうございました」



めぐみと琴美は帰って行った。



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