Love Step
* * * * * *



痛む身体を起こして朝食を食べていた。


利き腕の右手が動かないから左手で食べている。


フォークとスプーンで食べているのだが、左手で食べるのはすごく大変だった。


そんな杏梨を見守る雪哉だ。


杏梨が頼めば喜んで食べさせてくれるだろう。


まだ数口食べただけで「ふぅ」と息を吐くと、窓際に置かれた花束に目が行った。



いつの間に?誰か来てくれたのかな?


「お花……誰か来てくれたの?」


「いや……」


昨日、杏梨にプレゼントするはずの花束だった。



「じゃあ、ゆきちゃんが買って来てくれたの?」



「昨日プレゼントしようと思って買ったんだ 車の中に置きっぱなしで、今朝取って来たから少し元気がないな」



「大丈夫だよ すぐに生き生きしてくるよ」



わたしの為に花束を買っていてくれたんだ。



そう思うと顔がほころぶ杏梨だった。





ゆずるは約束の時間より30分早く来た。



その前にも店のスタッフ、遼平やめぐみが見舞いに来てくれた。



ちょうどゆずると入れ違いに帰った所だ。



「ゆずるさん」


「杏梨ちゃん!大丈夫?って言いたい所だけれどかなり痛そうね?」


「ゆずるさん、こんなに早くおうちは大丈夫なんですか?」


「ええ、もちろんよ 雪哉、仕事でしょ?杏梨ちゃんの事は任せて早く行きなさいな」



杏梨の母親のような姉を見て雪哉は苦笑いを浮かべると、ソファーの背に置いてあったジャケットを手にした。



「行ってくるよ、じゃあ、頼むよ」



「行ってくるよ」は杏梨に「じゃあ、頼むよ」は姉に言った。



「「行ってらっしゃい」」



2人の声に送られて雪哉は病室を後にした。



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