Love Step
「うん 落ちたときに手をついちゃったらしくて」



「夏だからギプスは辛いな」



「うん」



30分ほど話をすると、峻が腕時計を見た。



「もう行くよ」



「うん 来てくれてありがとう」



「いや……花も何も持ってこなくてごめんな」



驚いてすぐに病室へ来てしまったが、売店で売っている花束でも買ってくれば良かったと後悔した。



「ううん そんなのいいの お花いっぱいあるし」



「じゃあ、大事にしろよ?」



峻は柔らかく杏梨に微笑むと病室を出た。



* * * * * *



夕食を食べている最中に母が病室に戻ってきた。



春樹も一緒だった。



「デザート買ってきたわよ?」



食事のトレーの横にアイスクリームを袋から出しておく。



「ありがとう もう少しで食べ終わるから」



左手で食べるのには時間がかかる。



右利きの杏梨にはフォークでも食べづらかった。



「まだ硬いからゆっくり食べなさいな」



ドライアイスのせいでアイスクリームはまだカチカチに凍っていた。



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