Love Step
現場に戻るとカメラマンをはじめ、スタッフが5,6人いるのにシーンとしていた。



杏梨の姿を見ると女性編集者が駆け寄ってきた。



「あの!すみませんでした!」



女性編集者が深々と頭を下げた。



今の今までカメラマンに叱られていた。



彼女は初めて一つの雑誌を担当した。



ミスのないよう頑張っていたのだが……。



「いえ、あの、お願いします」



深々と頭を下げられて困った杏梨は頭をペコッと下げて先ほどのスツールに座った。



「カメラマンさん、すみませんでした よろしくお願いします」



杏梨の姿を見てめぐみは心の中で拍手を送った。



素直で良い子に育てましたね 貴美香さん




事件があってから彼女を育てるのは大変だっただろうにと感慨深げに頷いためぐみだった。



* * * * * *



「杏梨ちゃん!今日は本当にありがとうね」



遼平がオレンジジュースを飲んでいる杏梨のところへやって来てお礼を言った。



撮影隊は帰り、店の残ったスタッフだけで打ち上げをしていた。



「遼平さん、ごめんなさい 最初からちゃんと笑えていたら良かったのに……」



「そんな事ないよ!初めてなのに上出来だったよ」



遼平が顔の前で両手をブンブンさせて言う。



「杏梨ちゃん、モデルでもやっていけるわよ?」



めぐみが言う。



「えっ……無理ですよ……」



実際のところ、もう二度とやりたくない。



「あら、残念ね でも雪哉さんの所に永久就職だから働く必要はないわね」



「めぐみ、美容学校の資料を集めて欲しいんだ」



雪哉が言う。



「あら、杏梨ちゃん、美容師になりたいの?」


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