Love Step
* * * * * *



戻ってくるとソファーに座った杏梨がファッション雑誌を見ている。



「ゆきちゃん、峻くんが載ってるの」



峻が載っているページをかかげて見せる。



「あぁ」



言葉少なげに言うとキッチンへ行く。



今日は杏梨の好きな松花堂弁当を買って帰って来た。



麦茶を入れていると杏梨が近づいてきた。



「座ってていいよ」



「片手が使えるから運ぶよ」



そう言って麦茶の入ったグラスを一つ持って行った。



雪哉もグラスを持ってテーブルに行くと、杏梨が松花堂弁当の包みをはがすのに手間取っていた。



「あと数日でギプスが取れるね」



杏梨の手から弁当を取り上げると席に着かせた。



杏梨の小さなため息が聞こえた。



「明日、病院に行ってくるね」



かゆいし思うように動けないので早く取って欲しい。



「明日は始業式だろう?」



「うん でも終わったら時間があるから」



「1人で大丈夫かい?」



杏梨の顔がハッとなる。



その言葉がまた気に障ったらしい。



「ゆきちゃん、18なんだから大丈夫だよ?」



「それは分かっている」



「……ゆきちゃんはフェミニストだからすぐに気を回しちゃうんだよね?」



「フェミニスト?」



雪哉があっけに取られた顔になる。



「うん 女性に甘い、女性を大切にする男の人 ゆきちゃんはそうだもん」



言い切る杏梨に雪哉は深いため息を吐きたくなった。



俺が甘いのは杏梨だけだと言うのに……。




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