Love Step
「いえ、恋人です」



雪哉の一言に杏梨をはじめ、女性2人が驚きの声をあげた。




「えっ!?」

「ゆきちゃんっ!?」



女性2人は引きつった笑みを浮かべてお礼を言って立ち去った。



「ゆきちゃん、なんで言うのっ!?」



「隠す事もないだろう?婚約しているのに」



「でもっ……」



「いいから 気にしないで これからもこんな事があると思うし、いちいち否定していたら疲れるだろう?正直に行った方が気が楽だよ」



そう言ってくれて心から嬉しく思った杏梨だった。



雪哉の指先が杏梨の喉もとの下に光る指輪に触れる。



「これは指にはめようか」



チェーンを外し、するっと婚約指輪を抜き取ると杏梨の左手の指にはめた。




「これでよし」



指輪をはめた手を雪哉の手が包み込む。



「行こう、飛行機に乗り遅れる」



「うん」



杏梨は幸せいっぱいの笑みを雪哉に向けた。




* * * * * *



杏梨にとって飛行機に乗るのは初めての体験だ。



座席に座った途端になんだか胸がドキドキしてきた。



次々に埋まっていく席に圧迫感を感じる。



汗ばむ手でスカートをぎゅっと握り締める杏梨に雪哉は気づいた。



「どうした?」



「……ゆきちゃん」



「ん?」



「こんなにたくさんの人を乗せて空を飛ぶなんて信じられない……」



「大丈夫だよ そうか、杏梨は初めてだったね」



髪に手を伸ばし自分の方へ引き寄せる。



「心臓がドキドキしているね」



「……うん さっきまでは全然大丈夫だったの 席に着いたら心配になっちゃって……」



「心配はいらないよ あっという間に着くから 買ったガイドブックを見ようか」



なんとか気を紛らせようとしてくれる雪哉に申し訳ない。



杏梨は明るい笑顔を無理に作った。



「うん」



頷くとバッグの中から先ほどのガイドブックを取り出した。



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