Love Step
* * * * * *



杏梨の部屋から電話が鳴っているのが聞こえた。



杏梨はお風呂に入っている最中だが、この時間に最近は貴美香から電話が入る。



雪哉は部屋に入り机の上に置いてあった携帯電話を見た。



着信は案の定、貴美香だ。



「もしもし」



『あら、雪哉くん』



「杏梨はお風呂なんです」



『そう 用事はないのよ また電話するわね』



「伝えておきます」



電話を切り、携帯電話を机の上に置いた時、一枚の名刺が目に入った。



週刊○○?どうして杏梨がこんな名刺を?



「あれ?ゆきちゃん」



髪をタオルで拭きながら杏梨は雪哉を見ている。



「貴美香さんから電話が鳴っていたんだ」



「あ~ そうだっ!忘れてたっ」



舌をペロッと出した杏梨は雪哉の手元に目が止った。



「ゆきちゃん……」



「これはどうしたんだい?」



名刺をひらっとチラつかせてから聞く。



「えっと……今日の帰り道で……」



「いいかい?杏梨 マスコミや雑誌編集者に話しかけられても無視をするんだ 言ってあっただろう?」



怒ってはいないが、小さな子を諭すような口調だ。



「でもっ、ゆきちゃんが誤解されたままなんて嫌なの」



「俺は気にしていないから 杏梨も気にしないように努力して」



そう言って不安そうな顔の杏梨を引き寄せると抱きしめた。




< 558 / 613 >

この作品をシェア

pagetop