Love Step

ぎこちない生活

その日からゆきちゃんはわたしを腫れ物にでも触れるように接するようになった。


日曜日、朝食を食べたゆきちゃんは今日はCMの撮影で遅くなるから先に休んででと言って仕事に出かけた。


玄関で見送りドアが閉まると杏梨はその場にペタリと座り込んでしまった。


そっけない態度の雪哉を見て悲しくなり涙が出てしまったのだ。



わたしが悪いんだ……。

ゆきちゃんの好意を無駄にしちゃったから……。



夜になると寂しさは酷くなるばかりで、お笑い芸人の番組を見ていても耳に入ってこずソファーの上で膝を抱えて座りぼんやりとしていた。


* * * * * *


CM撮影の仕事が入っていた雪哉は店からスタジオへ向かった。


スタジオの中へ入ると何度か一緒に仕事をしたことのある石垣 エリカが嬉しそうに雪哉に近づいてきた。


「雪哉さんっ!」


目が大きくエキゾチックな顔立ちに、腰まである長い黒髪をなびかせて雪哉の前に立つ。


彼女は日本人とブラジル人のハーフでモデル出身だが、三木 彩と同じように女優活動も始めCMなどでよく見かけるようになった。


今日もヘアケアー商品のCM撮りだ。


美しい髪は雪哉が手を加えるだけで更に美しくなるが、CM監督がいかに美しく髪を見せるには雪哉が必要だからと撮影が終わるまでスタジオにいる予定だ。


「石垣さん、よろしくおねがいします」


目の前に立つエリカに挨拶をすると、いきなり首に腕が回り頬に彼女の唇が触れた。


エリカが気に入った相手に必要以上にスキンシップをするのは有名だ。


12歳まで父親の母国ブラジルで生活していたのでオープンな性格なのだ。


だから頬にキスされたくらいでは皆驚かない。


「雪哉さん よろしくお願いします♪」


にっこり笑うエリカに幼さが伺える。


まだ17歳 しかしプロ意識の高い子で撮影の時になれば皆をあっと言わせるほど大人の表情を見せる。


杏梨とは正反対の子だな。

彼女を見るたびにそう思ってしまう雪哉だった。




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