サクラ

 深く溜息をつきながら、漸く一言だけ千晶は言った。

「結構厳しい事言うのね……」

「喋り過ぎた…俺の事だから、的外れな見方してると思うから、忘れろ」

「無責任」

「平成の無責任男だもん、しゃあねえだろう」

 大越に話して良かったと千晶は思った。

 確かに、大越が言った事は、千晶の心の内とは少しズレているかも知れないが、丸っきり外れてるという訳ではない。

 ラジオのパーソナリティとか言われ、世間一般のOL等に比べれば、華やかな仕事に見える。けれど、自分達が何かを生み出したとか、作り上げたという部分では、なかなか目には見えない仕事だ。

 実感が欲しい。必要とされているんだという実感が。

 考えてみれば、報道局を希望していたのも、そういう思いが潜在的にあったからであろう。

 たかがラジオの音楽番組でも、それを感じれるんだと判ったのに、それに応えられない。

 自分の無力さにどう立ち向かえばいいのか、それが見えて来ない苛ただしさ。

「Maiの特番さあ、わたしがやっぱ相手すんの?」

「ちぃの名前が付いた番組で、当の本人がMCやんないでどうすんだよ」

「気が進まないなあ。ねえ、わたしの代わりにダイさんやれば?あの子、ダイさん好みの巨乳だよ」

「ざあんねん、俺は、正統派の巨乳好きなの。Maiは正統派じゃないから趣味じゃない」

「巨乳に正統派とかあんの?」

「もち」

「わけ判んない」

 真面目な顔でそんな事を言う大越を見て、千晶はその日初めて本当の笑顔を見せた。



< 63 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop