サクラ

「ちぃ、部長が呼んでるぞ」

 大越に言われ、部長のデスクへ行くと、編成や制作の主立った者がいた。

 時期が時期だけに、この顔触れが意味するところを千晶も直ぐに感づいた。

「麻宮君は、以前から報道局希望だったね?」

「はい」

「知っての通り、うちはFM局だから、報道といっても、テレビ局やAM局に比べ、そんなに人間を置いていない。局アナには兼務して貰ってるのが現状だし、番組的にも単にニュース原稿を読む程度だ。リスナーのニーズを考えれば、FM局は音楽を四六時中流していればいいというのが、これまでの考え方だった。だが、もうそれはマンネリ化した考えじゃないかといった意見が出ているのも確かだ。
 それでだが、春の番組改編でだな、うちらしい報道番組を制作する事になったんだ。まあ、報道番組といっても、時間は30分で、時間帯も朝になる。それに、丸っきりニュースばかり流すというのではなく、合間に音楽を流すという構成だ」

「それを私に、という事ですか?」

「ああ」

「判りました。じゃあ、今の番組と兼ねてという事ですね」

「いや、現在君が担当している番組は、新人のアナウンサーに担当して貰う」

 千晶は、一瞬返す言葉を失った。



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