来栖恭太郎は満月に嗤う
いつものように、クレオの管理のなっていない赤い液体をワイングラスで飲み干し、夕食が終わる。

不味ければ飲まなければいいようなものだが、生憎とこの赤い液体は俺の健康の秘訣のようなものだ。

毎日欠かさず飲む。

食事をとる事以上に、俺にとってはこの嗜好品の方が大切だ。

…その夕食を終える頃。

「来栖様」

ごく静かな声でクレオが語りかけてくる。

「今宵は馬での散歩はどうなされますか?」

「フム…」

ナプキンで口を拭いながら、俺は窓の外を眺める。

いい具合に霧も晴れ、満月が顔を覗かせている。

こんな夜は湖にも金色の満月が映り込み、実に幻想的な光景が見られる。

< 82 / 162 >

この作品をシェア

pagetop