名残の雪
『あんた』から『お前』に呼び名が変わってから半年以上経った。

時々、フルネームで呼ばれることもしばしば。


変わらず後期の学級委員も一緒で、わたしたちの関係はあまりにも新展開がなさすぎて、知恵が面白くないと責め立てるくらい。


「好きで準備体操なんてしてるわけないでしょ。寒すぎてやってられないのよっ」

相手はすでに遠ざかり、届くはずのない台詞を敢えて吐き捨てる。


告られてから、なんの進展もないのには不満がないと言えば嘘になるかもしれない。でもそれはわたしがなんのアクションも起こさないからで。

けれど、急に恋人同士を演じろと言われてもそれはそれで困る。

それに、わたしはきちんと返事をしたわけではないのだから、恋人でもなんでもない。と思っている。


準備体操だけで息が上がったわたしは、体育館の隅へと逃げ出した。


曖昧なわたしたちの関係。このままじゃいけないことくらい、わたしにだってわかる。
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