桜の木の下で
▼ 第一章



今から11年前の4月。



わたしはまだ5歳だった。



今日は年子のおにいちゃんの小学校の入学式。



わたしは、入学式から帰ったおにいちゃんと一緒に、家の近くにある大きな桜の木の下で遊んでいた。



このとき、桜は満開だった。



「あれ、おにいちゃん…?」



一緒に遊んでいたはずのおにいちゃんが突然いなくなった。



「おにいちゃーんっ!」



何度叫んでもおにいちゃんは出てこない。



「…おにい、ちゃん…?」



寂しくなって、涙がこぼれた。



「ぐすっ…ううっ…」



と、そのとき


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