そして俺らは走り出す

「紘嵩…君っ」


やがてそれは。



観念したかのように
か細い声として、俺の耳に届いた。


でも、俺の意地悪は終わることなく。


「…下の名前、呼び捨てでって言わなかったっけ?」

さらなる上を求めた。


「ひ、紘嵩…君!」

「違う」

「紘嵩……君っ!」

「違う」


「ゔ~~…

紘嵩…君!」


あーもー、可愛い。

可愛くて、仕方がない。



俺は、未だに俺を呼び捨て出来ずに、悪戦苦闘してる桜音の頭にポンッと手を乗せると

「今日はとりあえず合格」
と言って、クシャクシャッと頭を撫でた。



その事に、顔を真っ赤にさせ“あぅ…”なんて可愛い声を出しながら、髪を整える桜音に

見とれていたのは言うまでもない。



…つーかコイツどんだけ男に免疫ねーんだよ。

これくらいで顔真っ赤って……。


そう思うと、何となく笑いが込み上げてきて。


いきなり笑い出す俺を見て、桜音は“ふぇっ!?”とか言って慌て出す。



ああ、もう。

こんな時間が




いつまでも続けば良いのに──……



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