ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

さすがに初日は緊張して
お客さんの顔を見ることもできず
オーダーを間違えたり
グラスを割ったりと、散々だった…


それでも
ニコニコと笑って
励ましてくれるマスター


常連の人が多いせいか
お客さんも優しい人ばかりで
私の失敗も、「いいよ!いいよ!」
と、許してくれる。


そんなこんなで
勤めだして一ヶ月
初めての給料日。


「お疲れ様、これからも宜しくね」

「有難うございます」


良かった…
これで、黒木さんに借りた2万円返せる。
黒木さんは返さなくていいって言ったけど
そういう訳にはいかない。


閉店には少し早かったけど
お客さんが居なくなったので
マスターは外の明かりを消し
私にカウンターの椅子に座るように言う。


「コーヒーでも飲む?」

「あ、はい。頂きます」

「少しは慣れたみたいだね」

「いえ…まだまだです…
迷惑かけてすみません」


コーヒーのいい香りがする中
マスターは
「そんなことないよ。
みわちゃんは、とっても良くやってくれてる」
と、微笑む。


ここでも私は"みわ"だ。


「この前、午前中に来たお客さんが
みわちゃんは居ないの?って、残念そうだったよ」

「そんなこと…」

「いやいや、本当だって!
いい子に来て貰えて良かったよ。
紹介してくれた黒木さんに
何か御礼をしなきゃね」


お世辞だろうと思ったけど
嬉しかった。
黒木さんに迷惑掛けるのだけは
嫌だったから…


「それと…
前から聞こうと思ってたんだけど…
みわちゃんは黒木君と一緒に住んでるんだよね。
もちろん、付き合ってるんだよね」

「えっ?
ヤダ、マスター
私と黒木さんは、そんな関係じゃないですよ。
確かに、一緒に住んでますけど
同棲じゃなくて
同居です」

「同居?」

「はい」


理解に苦しむ様に首をひねるマスター


「良く分かんないけど…
でも、黒木君も変わったなぁー
今では来れば普通に話しをしてくれるけど
ここまで打ち解けてくれるまで
2年は掛かったもんな…」

「えっ?2年?」





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