ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

それは、予想外の言葉だった。


京子さんなら分かってくれる…

そう思ってたのは
私だけじゃないはず。
聖斗だって、きっと…


私と聖斗は、返す言葉も無く
それぞれ視線を落とす。


「…て、ね。
本当は、そう言わなきゃいけないんだろうけど…
アンタたちには
そんなこと言えないよ…」

「えっ?」


驚いて顔を上げると
京子さんが苦笑いを浮かべてる。


「京子さん?」

「世間の目から見りゃ
アンタたちの行動は、間違ってる。
でもね、アンタたちだけが悪い訳じゃないしね…

あんな勘違いさえ無けりゃ
普通に好き合って
普通に結婚してただろうに

でも、親子二代で不倫なんて
なんの因果だろうねぇ…」


哀れむ様な目で
私と聖斗の顔を見ては
深いため息をつく。


「仕方ない!
今夜は、とことん飲むか?」

「はぁ?
京子さん、店はいいのかよ?」


心配する聖斗に京子さんは
今はもう、息子さんのお嫁さんの若女将に
全て任せているからと
ちょっと寂しげに笑う。


「2人とも覚悟しな!
朝まで寝かせないよ!」

「ぐっ…」

「この家でイチャつくのは許さないからね!」
と、聖斗の背中をバシッと叩く。


「ババァ~ふざけやがって…」


口では、そんなこと言ってるけど
聖斗も京子さんも嬉しそうだ。


それから、私たち3人は
懐かしい昔話から
現在の状況まで語り合った。


もちろん、優斗のことも…

そして
聖斗が離婚したら
瑠菜ちゃんを引き取り
3人で生きて行く決心をしたことも…


京子さんはお酒を飲みながら
何を言うでもなく
聖斗の話しに耳を傾けていた。


障子の向こうから
小鳥のさえずりが聞こえ出した頃
言葉少なだった京子さんが
私と聖斗をジッと見て
ポツリと呟いたんだ…


「もう、離れるんじゃないよ…」

「あぁ、もうぜってー離さない」


そう答えた聖斗の手が
私の手を強く握った…




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