ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

薬学部は、卒業までに6年かかる。


その製薬会社に就職したのは
普通の大学を卒業した
由香さんの方が先だったそうだ…


由香さんは、優斗と常に一緒に居たいと思い
自分の勤めてる製薬会社に
優斗を誘った。


優斗も同じ気持ちだったのだろう…
伯母さんの言うことを聞かず
その製薬会社に就職を決めた。


新薬の開発部門で研究をしてた優斗だったが
それは、優斗が思い描いていた理想とは
遥かに掛け離れていて
地味で、失敗の繰り返し


すっかりやる気を無くしてた優斗


由香さんは
自分が誘ったことを後悔し始めていた…


そんなある日
経理部に勤めていた由香さんの所に
一本の電話が掛ってきたそうだ。


相手は、誰もが知ってる
外資系の製薬会社の研究員と名乗る男性からだった。


なぜか、その男性は
優斗と由香さんが付き合ってることを知っていて
男性の会社で、近々発売予定の新薬の製造方法が書かれた資料を
買って欲しいと言ってきた…


由香さんも、初めは断ったそうだ。
でも、この情報を優斗に渡せば
優斗は間違いなく英雄になれると言われ
心が動いた。


自信を失いかけてる優斗の力になりたい…


新薬の開発は、一番でなければならない。
特許を取得し、それにより億というお金が動く
他の製薬会社に先を越されれば
今までの研究は、全て水の泡


男の提示してきた金額は
300万
とても由香さんに払える金額ではなかった。


でも、この新薬の製造に成功したら
優斗には、何千万ものお金が入ると
男は笑ったそうだ。


由香さんは決断した。
経理部のPCを使い
架空の支払い伝票を作り
300万を手にした。


決算までには、まだ半年以上ある。
新薬が成功したら返せばいい…
会社だって儲かるんだ…


伯父さんが声を震わせ
「それって…横領?」
と、目を見開く。


「…そうです」


全ては、優斗の為…


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