ロンリー・ハート《この恋が禁断に変わるとき…》【完】

重なり合った心


私の必死の問いかけに
聖斗は答えることなく
真一文字に唇を結び
苦悩の表情を見せるのみ


伯父さんが帰ってくるといけないからと
聖斗は私を二階に行くようにと促す。


一度、自分の部屋に戻り
パーカーを羽織ると
私は聖斗の部屋に向かった。


少しだけ開いてるドア
こんな時も変わらない
聖斗のクセ


「聖斗…」


ベットの横に座っていた聖斗が
黙ったまま頷き
私に右手を差し出した。


早足に駆け寄ると聖斗の胸に飛び込み
ありったけの力で
彼を抱きしめた。


「どうして何も言ってくれないの?」

「…言ったら
止められなくなる…」

「私だって、もう止めらんないよ…」

「美羅…困らせんなよ…頼む」

「理由を聞かせてよ。
どうしてダメなの?」


私の背中にまわされた聖斗の腕が
肩へと移動し
私を無理やり引き離すと


「今は…勘弁してくれ…
近い内に、きっと話すから…」


そう言って
深々と息をついた。


そんな目しないで…
そんな辛そうな目を見たら
何も言えなくなるよ…


「約束…だよ?」

「あぁ…」


納得は出来なかったけど
今は聖斗を信じて
言う通りにしよう…


再び広い胸に顔を埋めた私の髪を
すくい上げる
聖斗の長い指


「美羅とこんなに話すの
ホント、久しぶりだな…」

「そうだね…
聖斗は私のこと避けてたから…」

「美羅だって、避けてたろ?」

「お互い様かな…」

「ガキの頃は
よく、ケンカして
怒鳴りあってたのに…」


そうだよね…
遠い昔が懐かしい…


「…ねぇ、聖斗。
あの時のこと…覚えてる?」




あの、夏の日に交わした
私たちの約束を…







< 81 / 379 >

この作品をシェア

pagetop