ダンデライオン~春、キミに恋をする~

「最近ラブラブじゃん。君ら」

「え?そ、そうかな……」


沙耶はオレンジのシフォンケーキを頬張りながらあたしの顔を覗き込んだ。

ニヤニヤと含み笑いの沙耶。
あたしは恥ずかしくて視線を落とした。



学校の帰り。

あたし達ふたりは、少し寄り道をして駅の近くのカフェにいた。



アンティーク調の店内はステンドガラスのあしらった小さな窓からの光と、グッと落としたオレンジの照明が薄暗くて、落ち着くんだ。

ここに来るお客さんも、女子大生とかOLさんが多くて、このカフェでお茶してると少しだけ大人になれたみたいで好きなの。



飴色のテーブルに置かれた紅茶をコクンと口に含んだ。

その瞬間広がる、甘い香り。


あの七夕の日。

響の家で飲んだ『キャンディ』って言う紅茶を思い出して胸の奥がキュッと痛くなった。




「……んで? なにが心配なの?」

「え?」



口に入っていたケーキをゴクンと呑み込んだ沙耶は、首を傾げた。


まだ沙耶には何も言ってないのに、そう聞いてくるあたり、やっぱり鋭いというか。
あたしはコトリとカップを戻すと、小さく息をついた。



「……そう見える?」

「うーん。 そうだなぁ、今の状況が幸せすぎで、これは夢なの?って感じ」




はい。

まさにその通り。


毎日、信じられなくて。
ベットから起きて鏡の中の自分と向き合いながら頬をつねるのが毎朝の日課になりつつあった。


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