ダンデライオン~春、キミに恋をする~

何かの映像みたいに、周りの景色と目を見開いてる響の姿が重なる。


「響はこんなとこで止まってたらダメなんだよ。
そのために言わなきゃならないこと、わかってるでしょ?」

「……」

「行ってください!男らしく正直になってくださいっ」



ビシって響を指差してそれから、にこって笑って見せる。

あたしは大丈夫だよって、そう伝えたくて。

そんなあたしを見て、何か言いかけた響だったけど、すぐにその視線を足元に落とした。




それから……。


「前に進め、か……。うん。俺、行ってくる」

「……!」


そして響は、軽やかに、春に舞う花びらのように地面を駆け出した。
あたしを通り過ぎるその時、一陣の風が吹く。



響の……。

春の匂いがした……。




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