ダンデライオン~春、キミに恋をする~


壁にあたしを追いやった大野健吾は、身をかがめて意地悪に笑った。



「教えてあげてもいいけど……そのかわり、キスしてもいい?」

「は?え、ちょ……や……」



ジリジリと距離を詰める大野健吾から逃れようと、迫る胸を押しやる。

でも、全然びくともしなくて。


「いーじゃん。ほら、拒否んなよ。こっち向けって」

「……っ……」


顎をキュッと掴まれて、強制的に上を向かされた。


な、なんで?
なんでこーなるの!!?

あたしを見下ろす大野健吾の顔が、見た事ないくらい男の人の顔で。
怖くて、身動き取れなくて……。

伏し目がちのその瞳の中の自分が見たくなくて、思わずギュッと目を閉じた。



「……」

「……」



その時だった。


唇に、ふって息がかかってギョッとして目を開けた。



……え?


見ると、大野健吾は顔を背けて何かを堪えていた。


こ、今度はなに?


「ど、どうしたの……」


呟いたまま呆気にとられて固まっていると、もう我慢の限界みたいに大野健吾が吹き出した。


「ぶはははは!す、すっげぇ顔~」

「……な……な……」


カアアアって顔がアツくなる。

からかうにも程かあるっつーの!


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