恋人はトップアイドル

心の声を聞かせて SIDE 輝

『今日は、やっぱり会えない。ごめんね───。』

仕事を終えて、携帯を開くと、そんなメールが残っていた。

もしかしたら、という懸念はあった。

優美の学校から帰るために通りがかった廊下で目にした、学力テストの結果。

1位なんてすごい。

そう思って、優美の顔を見たら、優美はどこか青ざめている。

なぜ?

そう思ったが、聞けるはずもない。手を出せるはずもない。

鈴木健人というヤツが、優美をどことなくフォローしていたから、優美が何かにショックを受けていたのは間違いなかった。

でもあのヤロー・・・
友達の分際で馴れ馴れしいんだよ!

優美の背中に手を回していたのを、煮え繰り返る思いで見ていた。だけどそれを取っ払えない。俺がそんなことをすればどうなるか、想像だけでわかる。


でもそんなんでこの腹の虫は治まらないから、家に行けることで我慢していた。
だけど、最後校長室を出る時に響いた校長の声。明らかに、俺たちに向けるものとは違っていた。

最後に見えたのは、優美の小さな背中だけだ───。


校長室を出た後、優太がいった。

『校長、優美ちゃんに怒ってなかった・・?』

『なんかヘマでもしたんじゃねえの?』

隼人がそれにどうでもよさそうに答える。

『鈴木君も、さっきから難しい顔してるね。』

『いや・・平気っすよ。』

悠がそういうと、確かに鈴木は、優美へのとは打って変わってクールに受け答えた。

『じゃあここで。送ってくれてありがとう。』

校舎の玄関口前に止められた車の前で、悠がいう。スタッフたちは、先に車に乗り込んでいた。

『あーと、すんません、優美は・・あんたらの下でバイトしてるんですよね?』

『・・・知ってんのか。』

『ああ、まあ、大体は。』

隼人の驚きの声に、鈴木は俺をチラッと見ながら答えた。

『うちの学校って、厳しいんすよ。』

『は?』

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