恋人はトップアイドル
さ、小夜姉・・?ユキ・・?

誰、なんだろう?

よくわからないけど、何故か胸がチクンとする。

「だから優美ちゃんは、きっと輝にとっては特別なんだろうね。」

え・・・?

「優太!スタンバイ!」

すると焦ったように、優太くんの通しスタッフが駆け寄ってきた。

「えーもう?」

「もう?じゃないだろ!油売ってないで早くしろよ!」

「わかったよー。じゃーね、優美ちゃん。」

渋々といった感じで頷くと、優太くんはあたしから離れていった。

な、なんだかスタッフさんが不憫・・・。


とゆうか、さっきの話。


輝があたしを・・・?


そんな夢みたいな話、絶対にないよ。

「そんなこと・・あるわけない・・・。」

だけど微かに、高鳴る胸。勘違いしてしまいそうな輝の微笑み。隠したあたしの気持ち。

すべてが、もしそうならば・・、と、自分に都合のいい物語を作ってしまいそうな方向に向かっていく。


あたしはフルフルと首を横に振って、頬をパン!と叩いた。


「今は、集中集中。」


「輝さん、そろそろセッティングお願いします。」

誰かスタッフの声が聞こえて振り返った。シャワーを浴びて少しさっぱりした感じの輝が立っている。多分身体の汗だけ流したんだろう。

あたしは衣装を持って近づいていった。

「輝、ジャケット。」

「ああ。」

輝にジャケットを着せて、ヘアメイクさんに流す。

少し湿った髪が、また綺麗に飾られて、顔に粉が叩かれる。
最後に帽子を被せればセッティングは完了。


あともう少しで、輝のスタンバイだ。


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