空中少年(Gnawing at this heart)

青空(orange)

深くて濃くて高い青空、いやに映えるシャツの白さ。
不覚にも、見惚れた。






「長谷川ぁ」



オレンジジュースの海の向こう、茶色い髪が揺れている。

屋上は風が強くて、太陽がやたら近かった。



「長谷川もこっち来いって」

「嫌だよ。バカじゃないの」



小坂は陽の光を全身に浴びるようにして、大の字に寝そべっている。光合成でもしたいんだろうか。



「ねえ、もう昼休み終わるよ。戻らなくていいの」



小坂の右手に握られた、潰れた紙パックを眺めながら声をかける。

紙パックに描かれたオレンジは、実物よりずっと鮮やかな色だ。

まして剥き出しのコンクリートの上に撒き散らされた液体なんて、黒いばかりで到底、敵いそうにない。



授業なんかどうでもいいじゃん、と笑い混じりの気怠い声。



「こっち来てくれたらさあ、そのリンゴジュース、俺にかけてもいいよ」



目線だけこっちに向けて、楽しげに微笑んだ。

私は自分の右手に提げた、弁当の包みとペットボトルを一瞬見下ろして、溜め息をつく。



「意味わかんない。あたしは教室戻るからね」
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