はつこい
苦しかった。心臓らへんが、ぐっ、って。ぎゅっ、って。くぅ、って。大切な人が居なくなることがどんなに苦しいのか私は知ってる。

悠はきっと心から好きだったんだ、彼女のことを。5年前に別れた彼女のことを。すっきりさっぱり別れをしていないから、今でもこうして深く縛られているのだ。
気がついたら口が動いてた。

「大丈夫。私は悠と一緒にいるから。置いていったりしないから。」

腕は勝手に彼を抱きしめていた。

ありがとう、そう呟いた彼は静かに私の腕の中で涙を流していた。

テレビからは、懐かしいあのドラマのエンディングが優しく流れていた。


 
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