雪がとけたら


吸い込まれる様に京都タワーを見つめていたあいつに、僕はふいに声をかけた。


「とりあえず…場所探そう」


計画もくそもないこの遠出。

制服のままの僕等の手には、軽いカバンだけだった。

郵便局でとりあえずあるだけのお金をおろし、今夜夜風を凌げる場所を探すことにした。












…街に光るネオンとはどこか違う人工的な光り。


やり場のない視線をとりあえず足元に落とし、僕は棚に腰かけていた。


部屋の真ん中に仰々しく存在するベッドを挟み、対角線上のソファーにはあいつが座っている。


同じように視線を落とし、でも僕の様に戸惑ったりはしていなかった。




…よく考えればわかること。

制服のままの僕等。

予約もないのに普通のホテルには泊まれるはずがなかった。

いくつかのいぶかしげな視線を浴びた後、あいつが入ったのはこのホテル。




所謂、ラブホテルというところで。




僕だけならともかく、女のあいつを野宿させるわけにはいかない。

でも何の躊躇いもなくお遊戯会にある様な暖簾をくぐるあいつに、僕は戸惑いを隠せずにいた。


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