雪がとけたら
静かな夜の中で、あいつの声が響く。
「その緑見てたらね、涙が止まらなくなっちゃって。こんなあたしにも…優しく揺れてくれるんだなって、思った。…その日、決めたの。毎年毎年、どんなに年をとっても、この日だけは桜の木に向かって祈ろうって。」
風の中、微動だにせず祈り続けるあいつが瞼に浮かぶ。
「あたしは許されなくてもいいから…どうかあの子がまた、生まれ変われますように…って。あたしの所になんて望まないから…いつかあの子が、またこの世に生を受けて…綺麗な桜を、見ることができますように…って」
…あいつの言葉は、僕の胸にぐっと突き刺さる。
あの日のあいつは、まるで天使のようだった。
きっとあいつの祈りは、届いてるはずだと思った。
「…この事は、誰にも言えなかった。千歌にさえ言ってなかったの。だって…言ったところで、何が変わるわけでもないでしょ?」
あいつは小さくうつ向いた。
「言ったところで…あたしの罪が、消えるわけじゃない。」
…どうにもならないこと。
誰が何をしても、変わることのない真実。