雪がとけたら








……………


「知ってる?人の記憶に一番残りやすいのは、嗅覚なんだって」


「そうなの?」


「ほんとかどうかは知らないけどね。でも、なんとなくわかるな」


「そう?」


「何かの香りって、何かを思い出すきっかけになったりしない?それって香りが、記憶に強く残ってるからだよね」


「ああ、わかるかも。中学の頃使ってた香水の香りがすると、あの頃のことがばーって駆け抜ける感じがするし」


「だよね。あたしもそんな感じ!」


「じゃあ、今悟子がつけてる香水の香りが、いつか今日を思い出させてくれるのかな」


「そうかも!じゃあしっかり雪ちゃんの香り覚えとこっ」


「年取ってよぼよぼのばあちゃんになっても、この香水があれば若々しい悟子が蘇るんだな」


「…なんかそう言われるとやだな。」


「あははっ、仕方ないって。いつかこの目尻にもシワが…」


「やーめーてーっ」


「あははっ!まぁその頃は俺の腰も曲がってるんだよな」


「そうだよぉ!あたしも雪ちゃんの香水で、若々しい雪ちゃんを堪能しよっと!」


「…ダンディーなじいちゃん目指そっと」










……………






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