雪がとけたら


最初に言ったけど、僕はあいつとの出会いを覚えてない。

当たり前だ。

僕とあいつが出会ったのは、二人の記憶能力がまだ発達していない頃だったからだ。


まだ言葉も知らず、歩くこともできず、ただ本能のままに泣き叫ぶことしかできなかった頃。


回りくどい言い方をしなければ、生まれた時から一緒だったのだ。



僕の母親とあいつの母親は親友で、お互いがお互いの旦那と付き合っていた頃は、しょっちゅう一緒に遊んでいたらしい。

結婚した時期もほぼ同じで、新居も同じマンション。

僕等が生まれた時から一緒にいることも、この環境からして必然なのだろう。


世間一般では、こういう関係を『幼なじみ』だとか『腐れ縁』だとか言うらしいけど、僕はどうもピンとこない。

僕にとってあいつは、『幼なじみ』でも『腐れ縁』でもなかった。

上手い言葉が見つからないけど、『兄弟』だとか『家族』という言葉の方がしっくりきた。



やがてそれも違うと気付くのだけど、幼い僕は、一番ぴったりくる言葉を見つけることはできなかった。



とにかく僕等は、家族の様に、兄弟の様に育ってきたのだ。




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