怖い男達
 沈黙を破ったのは大男だった。


「女房はいないよ。あんたは一体誰だ?」


 野太い声で問う。

 テンコは家にいないのか。買い物にでも行ってるのかもしれない。そう思ったゴンゾウは、強気で大男に云った。


「じゃ、奥さんが帰ってくるまで待たせてもらいますね。俺は、ツイッタンでゴンゾウと名乗ってますが、奥さんとは仲が良いんですよ」


 そう宣言すると、大男の身体が小刻みに震えだした。



「ゴ、ゴンゾウだと? お前がゴンゾウなのか? 帰れ! 帰ってちょうだい」


 大男は急に女性のような云い方をすると、目に涙を浮かべた。
 ま、まさか、そんな嘘だろ?

 ゴンゾウの額からは冷や汗が流れ、頭の中で悪い想像をしていると、大男ははっきりと云った。




「私がテンコなのよ。戸籍は男だけれど、心は女なんだから仕方ないじゃない。こんなところまで一体何しに来たのよ。あんたしつこいから嫌い」


 二○三号室のドアが閉められ、さすがのゴンゾウも腰を抜かした。

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