命の箱
そして自分の腕を見た真奈は
目をつぶりそのまま床へ倒れこむ。


真奈の左腕には
無数の横へ伸びる傷跡があった。


浅いものから深く長いものまで


そのためらい傷は
真奈の手首を無数に彩っていた。


カチャ…


雄一にお茶を入れようとして
沸かした電気ケトルが音をたてた。



身に覚えのない自傷行為に恐怖した真奈は
まだ気がつく様子がない。


家の中に
ゆったりとした時間が流れていく。


真奈だけを取り残して。

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