「俺とキスしてみない?」
フォーリンラヴ!
言うより早く、俺は手を伸ばしていた。

ビクン、と身をこわばらせるりんごに、俺の手は空をつかむ。

その手を握りしめたまま、俺は力なく、下ろした。

「…………アイツは彼女でもない」

何だか声がかすれてるような気がする。

緊張で、喉がカラカラだ。

「つまり…………そう、好きじゃない」

絞り出すように言うと、りんごの顔がくしゃっとゆがんだ。


「あたしもそうでしょ?」

「違う。遊びじゃない」

「言い訳はいいょ」

唇をかみしめながら言うりんご。

「言い訳じゃない」

叫びたいのをこらえて、静かに言う、と。

「もう!分かんないよ!
 カイト君が考えてるコト
 分かんない!」

堰が切れたように、泣き叫ぶりんご。

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