求愛ラバーズ
目が覚めたというか、脳が覚めた。





「無理だったんじゃないの?」


「出来ないとは言ってないわ。」





似たようなものだと思うけど、口が緩んで仕方がない。





「興味ないフリしてたけど、本当はして欲しかったんじゃないの?」




ニヤリと笑った奥様から視線を逸らす。





「ねぇ、私を見てよ……。」





いつの間にか、俺の肩に寄り掛かり耳元で艶っぽく囁いてくる。





「恥ずかしがらなくていいじゃない。私達、夫婦なんだから自然な事でしょ?」


「――っ、もう行くから。帰ってからね。」





情けなくもいっぱいいっぱいで振り払うように、玄関に向かうが叶わなかった。





「行ってきますのキスするまで離さない。」





背中に胸を押し付けられ、朝から大変な事になりそうだ。





「・・・・・・・・・・・・。」





何歳になっても恥ずかしいものは恥ずかしいもので。





“素直じゃないわね”そう言って唇を奪われた。





俺の奥様は手に負えなくて、けど俺をよくわかっている。





あんなドラマなんか見なきゃよかったと今さら後悔した。




-END-
< 94 / 97 >

この作品をシェア

pagetop