セレーンの祝福
ガラガラガラガラガラ

「…!!!」

急激に引き戻された現実の中では、やけに酷く車輪の音が響いた。

いつもと違う夢に、何故か心が震えた。

「……師匠、起きてますか?」

向かいに座る師匠は、相変わらず身をまるめて顔を伏せたまま。

師匠が起きているかどうかは分からなかったが、ただ呆然と呟いていた。

「師匠…あの時何て……」


今までずっと忘れていた、その記憶。

馬車に乗るのは初めてだと思ってた。

村の外には出たことはないと思ってた。


でも、それは違った。


まだ霧がかかる頭の中でぐるぐる夢が廻る。

それを止めたのは、車輪と蹄が進むのを止めた時だった。

「ラグス国へようこそおいで下さいました」

御者が優雅な動作で扉を開けると、柔らかな日差しが差し込んでくる。

いつの間にか夜が明けていたらしい。
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