君に染まる(後編)

パーティー






『パーティー?』


「うん。菅咲財閥と共同企画のホテルのOPEN記念パーティーなんだって。明後日の土曜日に」


『未央に来て欲しいって?…なんのために?』


電話越しの楓ちゃんが問いかける。




「それが…恋人として出席して欲しいって」

『え!?』



私と同じ反応だ。

さっきの私と同じ。



『え、でも…あの婚約者も当然来るでしょ?大丈夫?』

「大丈夫…じゃないかな。不安でしょうがない」


パーティーなんて出席したことないし、作法も分からないし、仕事関係の人ばかりだろうし私なんて場違いなだけ。

先輩に恥かかせたらって思うと今から緊張してきた。


『ねぇ、未央?獅堂先輩とのこと何か考えてる?』

「どういうこと?」

『だから、将来のことだよ』


将来…。



『恋人としてパーティーに連れていくってことはさ、獅堂先輩は未央との結婚考えてるんじゃないの?』

「結婚!?」


思わず口元を覆う。



『将来は獅堂財閥の会長でしょ?そういう世界はよく分からないけどいろんな人との交流って大事だろうし、未央がもし奥さんになったら獅堂先輩と一緒に親交深めていかないといけないんじゃないかな』

「でも私、先輩の仕事のことなんてまったく分かんないよ」

『だからこれを機会に、って思ってるんじゃない?婚約者が出てきたことで余計にさ。あの人と結婚するんだって周囲に印象付けされる前に未央のこと紹介したいんじゃないの?』


「そんな…」


『どっちにしても未央がどうしたいかだと思うよ?創吾先輩と一緒にいるって遅かれ早かれそういうことだと思うし』


『私もなんだけどさ…』と力なく話す楓ちゃん。


私のことで楓ちゃんも卓先輩とのことを自覚しだしたみたいだった。




普通に恋愛をするのとは違う。


ただ好きだから、っていうだけじゃダメなんだ。



創吾先輩の側にいるって、会社のことも考えていかないといけないんだ。


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