出世魚
夕方になると客足はグッと減り

私はカウター周りで事務処理をしていた。


心ここにあらず。


上の空。


「栗原さん?」


「ぅえっ、あっ、久江さんっ。」

「どうしたの、ぼーっとして。」

気付けば彼が目の前に。

「いやっ、何でもないっす。」

変に意識してしまう。

久江さんは「そっ。」と返事をして

売り場へ向かおうとした。

「あのっ!」


「何?」


「久江さんって彼女いないんですよね?」


「うん、居ないよ。」


「じゃぁ・・・」




「奥さんと娘はいるけど」
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