出世魚
「うわ、ウマっ!!」

再び走りだした車の中で、
今日一番の大きな声で彼が叫ぶ。

私は思わずビクッとして日向夏を
こぼしそうになってしまった。

「栗原さんは?日向夏どうよ?」

「ちょっと待って下さいね・・。
…。あ〜若干、残念な味です。」

本当は相当残念な味がした。

「マジで?どんな?どんな?」

彼はそういって左手を伸ばす。

このまま渡していいのだろうか。
でも、コップがあるわけもなく。

「はい・・・。」

左手に日向夏サイダーを渡す。

「…うわ、何これ超マズっ!」

今日二番の大きな叫び声。

「何か…残念な味ですよね。」

彼からペットボトルを受け取り
キャップを閉める。

美味しくないを理由に、それ以上
手を付けるのをやめた。


間接キス・・・なんて
恥じらう歳でもないのに。
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