出世魚
長かった研修が終わる。

(はぁ、肩こった。)

首を回しながら会議室の外に出る。

久江さんの研修はまだ終わっておらず
私はロビーで待つ事にした。

「あなた、久江君と同じお店の人?」

ソファに座ってボーっとしていると
見知らぬ女の人に声をかけられた。

「はい・・そうですけど・・。」

タイトなスーツを着こなしたその女性
歳の頃は・・・30代前半とみた。

「久江君元気?」

「はい、元気・・だと思います。」

思い出した、この人。
3ヶ月研修で話してた偉い人の秘書だ。

「そう、なら良かった。じゃ、久江君に
宜しくって言っておいて。」

「はい。」

「…橘って言えば分かるから。」

そう言って彼女は再び会議室の中へ
入って行った。

何が何だかさっぱり分からず、何となく
威圧的な態度にビビってしまった。

久江君…って呼ぶ人、店長以外初めて。

なんかイイ気分がしないから、このまま
黙っててやろうかと思ったけど

そんな度胸も無いから多分帰りの車で
言っちゃうんだろうな。

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