フェイクハント
「涼、先に風呂でも入ってこいよ。疲れたろ」


「ありがとう。じゃ先にお風呂頂くわね」


 涼は海人に微笑み返すと、浴室に向かった。お風呂に入り湯船に浸かると、ぼんやりと今日の出来事を振り返った。静夫が殺されたこと、典子から聞いた話し、どれも嘘であって欲しいと、手でお湯をすくい顔にかけた。

 その間海人は、リビングにある棚から、止めていたタバコを取り出し、椅子に座ると、ライターで火を点け、ゆっくりとタバコを吸い、溜息と一緒に煙を吐き出した。
 
 二人が眠りにつく頃は、すでに深夜になっていたが、海人も涼も悪夢を繰り返すと、何度も目が覚め、現実と夢の境界線が壊された気分だった。そして何度も寝返りを打ち、二人は寝苦しい夜を過ごした……。
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