フェイクハント
「なぁ、遥見なかったか? さっきから姿が見えないんだよ」


 秀樹はキョロキョロしながら訊いた。
 涼と雪絵は顔を見合わせ、見ていないことを告げると、秀樹と海人も顔を見合わせた。


「悲しさに耐え切れなくて、何処かで泣いてるのかもしれないな。あいつ気が強いから、人に弱いところを見られるの、昔から嫌いだったし」


「そうだな、遥には珍しく警察署に来た時も、典子よりも取り乱して冷静じゃなかったし。今はそっとしといてやろうか」


 秀樹と海人はそう話しながら、戻って行った。

 それから涼は考えていた。遥はやはり静夫の浮気相手だったんじゃないかと……。


 お通夜も終わり、応接間に作られた祭壇の前には、典子、海人、涼、雪絵、秀樹の五人が集まっていた。

 遥は姿を消したままで、列席者が帰った後みんなで探したが結局見つからなかった。

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