フェイクハント
「ううん、本当は中学の時、私も静夫が好きだったって。そして、典子が好きって宣言しなければ私が告白しようと思ってたのにって……そう云ってた」


 涼は身体を元の体勢に戻すと、


「じゃあ、浮気相手だとは限らないんじゃないかな? だって中学時代の話しでしょ? それに、遥は今までだって彼氏いたじゃない」


 涼が典子を安心させるような口調で云うと「考えすぎかな」と典子は微笑し、お酒に口をつけた。

 気丈に振舞ってはいるけれど、心の中じゃどれほど悲しんでいるんだろうと考えた涼は胸が苦しくなった。


 キャッーーーーーー!!


 突然、闇を切り裂くような悲鳴が外から聞こえた。


「今の雪絵? 遥? この屋敷に残っているのは私達だけよね?」


「私達しか残ってないわ。今の悲鳴、雪絵の声じゃなかった?」


「典子、私達も行ってみましょう。外から聞こえたわよね? 庭かしら」


 そして涼と典子は急いで庭に向かった。
 見たくない光景を見に……。
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