わたしと保健室と彼~4つのお題+α


 大人が子供を慰める為に言ってるって、分かってる。
 普段のあたしならそんなお世辞通用しないって笑って見せるけど。

 今は素直に、先生の言葉が嬉しかった。


 優しさが、じんわりと胸に広がっていく。



「では、また落ち着いた頃に来ますね」

「えっ」


 行っちゃうの?
 そう言いかけて、留まる。

 これじゃまるで、甘えたな子供だ。


 カーテンを閉めた後、今度は遠ざかる先生の靴音。


「…霧島先生」

 呟くような小さな声さえ、静まり返ったこの部屋にはよく響く。

 靴音が止まった。


「…ありがとう」


 きっといつものあたしなら、こんな事言わない。

 自然体で優しくて温かいお日様みたいな、霧島先生に当てられたんだ。


 フッと息を吐いた気配が音になって届く。

 先生が、優しく笑ってくれているような気がした。


「どういたしまして、珠洲白(スズシロ)さん」


 柔らかな霧島先生の声が余韻を残して響いた。



 ……一人になった保健室。

 静寂に響く泣き声は、もう聞こえない。



 ――今度は笑顔で、先生に会いに来よう。




~end
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