恋して日和



「じゃないと毎回毎回藍子に借りに来たりしないって!」


「そうそう、もう付き合っちゃえよ!」


「もうなごみも綾も何言ってんの?あたしが好きなのは‥」


「“好きなのは‥”?」


「~言わないし!」


なごみと綾のニヤついた顔を見て、あたしは我に返った。


――哲斗を好きになって半年、だけどこの半年、なに一つ変わらなかった。


「あたし、最近自分の気持ちわかんないよ‥。」


「‥藍子?」


あたしは、少しはやいセミの鳴き声と暑い熱気がただ教室に広がるのを感じた。


夏休み目前。


ただ漠然と、なにかが変わればいいと思ってた。


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