僕の唄君の声



お風呂からあがり、部屋に戻ろうと階段を上がれば、何故か私の部屋から出てきたお婆ちゃんとすれ違った。


「どしたの?」

「イイ男なのか確認してきたのよ」

「‥‥お婆ちゃん」

「冗談よ。にしてもイイ男ね」

「‥はあ」

「ほんと‥、いい人ね。」

「そ、だね」




冗談とともにポツリと落とされた言葉は、
分かりきったことであるけれど、分からないような、そんな言葉だった。



「貴女の全てを理解しようとしてたわ」




そう言って、お婆ちゃんは1階におりていった。




カチャ、


ドアを開けると突っ立ったままの、眉間に皺を寄せた玲が居た。



「‥れーい、」

「ん?」




辛そうな顔して笑わないでよ
理解しなくていいから、
玲の優しく笑う顔を見せてよ




ぎゅうと抱きしめられた私は、玲の背中をポンポン、と叩きながら誰に対してか分からない「大丈夫」をずっと言い続けた。


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