僕の唄君の声



そんなこんなを住宅街で繰り広げながら歩いてしばらくすると、急に玲が立ち止まった。

「ぶ‥っ」

そしてそれにうまく反応出来なかった。


「‥何やってんだよ」

「玲が急に立ち止まったから‥!」

「急も何も、家着いたんだからしょうがねェだろうが。」



止まるだろ普通、とか言いながら髪に指を通してこちらをチラと見て、近づいてきた。


(いい、いい色気が‥!)
「‥って近い!」

「‥キスしてェ」

「‥やだ無理、絶対いや」

「‥なあ、」

「いや」

「‥っ」

「(‥あ、)」




沈黙。

互いに目は合ってて、さっき玲が近付いてきたのを止めようと伸ばした手は、玲のセーターの腕部分をギュ、と握ったまま。


触れ合ってるのに冷たい。



玲の顔が苦しそうに痛そうに怒っているかのように、歪んだ。



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