グレーな吐息~せぴあなタメ息③~
自分で驚いた。
突然のあまりの感動に、涙してたとは。
「・・・ごめん。今、すごい感動した。
悟さん、歌、上手すぎ」
悟はホッとしたような表情で、サイドブレーキをひいた。
「あれ?着いたの?」
「そう。ここが目的地の駐車場。
機材は後で運ぶけど、その前に、類を届けに行かないと。
でも、類が落ち着くまで待つ時間くらいはあるよ」
落ち着く、どころか、ここに何をしに着たのか思い出してしまって。
手が震えだした。
「え?今度はどうしたの?」
「あああ・・・あたし、歌えるかな。
反則だよ。
あんなの聞かされた後で、歌えないかも」
エンジン音が消える。
静かな空間。
目をやると、悟がこちらを見ていた。
目があう。
「大丈夫。類の声も歌も、好きだよ」
震えが、吹き飛んだ。