迷える仔羊



ガサッ


「『先生大好き~』」


ガサッ


「『あたしと遊びに行こ~よ♪』」


ガサッ


「『死ねバーカ』」


ガサッ


「『今度いつ相手してくれるの?』…

…~~~っあぁもうッッ!!!

いったいココで何してんのよあのクソ親父は!!」


大きな叫び声が、放課後の相談室内に響き渡った。


「…はぁ…ホントに…っ」


思わずバタンと机に突っ伏する。



あたしは高藤葉月、15歳。

この春、お父さんがカウンセラーを勤める学校に入学したばかりの高校1年生。

お父さんが病院で言ってた“迷える仔羊ちゃんたち”っていうのは、たぶん学校の相談室に来る人たちのことだ。

お父さんはこの相談室で、悩んでる子の話を聞いたりアドバイスしたりしてるはずなんだけど…


「イタズラ書きばっかじゃん…」


備え付けの、相談予約BOXをひっくり返してみたが、相談らしきモノは見当たらない。

それどころか、妙に意味深なメモばっかりだ。


はあ…とため息が漏れる。


お父さんは、確かに娘のあたしから見ても、かなり格好良い。

18歳になってすぐ、2年付き合った2つ年上のお母さんと結婚したお父さん。

それからすぐあたしが生まれたから、まだ30代前半なんだよね。

しかもなかなかの童顔だから、20代に見間違えられることすらある。

そりゃあ女子生徒が騒ぐのも無理ないかもしれないけど…

それにしたって、先生でしょうが!?

『今度いつ相手してくれるの』って何の相手するわけ??


< 4 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop