両手でも足りない
「所謂、思春期なわけだ」

トモくんが発した一言は海斗に向けられた言葉だと思ったあたしは、コクリと頷く。思春期というか、あたしにだけ反抗期なんだと思う。


すると、なにやら「いや、海斗じゃなくてさ」と付け加えられたので、あたしはガバッと顔を上げた。


「青海のことだけどね」

「え?なんであたし?」

自分に向けて思わず指を差してしまう。


確実に今は海斗の話題だったはず。


「アイツは単純だけど、青海の脳内はちと複雑みたいだなと。男って単純に出来てんだよ、女の方がよっぽど複雑だ」

最後の台詞は落胆しているように聞こえたのは、あたしの気のせいかな。


歳は一つしか違わないのに、どこからそんな台詞が出てくるんだろう。

意味深くて、もっと聞きたくてもっと教えてもらいたくなるから、帰宅後の夕方は最近海斗の家よりもほとんど、トモくんに会いに来るのが日課になっちゃってる。
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