放課後の恋
いちいち感動する美月を面白そうに眺める。

「こうするともっとよく見える」

美月に覆いかぶさるように背後からプリズムを取り、一番西日が射している所でかざす。

まるで抱きすくめられるような体勢とふわりと漂う香水の香りに美月の鼓動は早くなる。

谷川を見上げた美月は意外な程に谷川の顔が近くにあって息を飲んだ。

「どうした?」

谷川の問いに慌てて顔を伏せて呟く。

「別に…」

「コーヒー冷めるぞ」

プリズムを美月の手のひらに置きブラインドを閉めた。

再度向かいに座った美月は谷川を見て言った。

「眼鏡してないんだね」

「2人の時は外せって言ったのは瀬尾だろ」

別に私の言った事なんて守らなくていいのに…。

その反面、誰も知らない谷川の秘密に触れているのは自分だけなんだとの優越感めいた感情もある。

「今日の授業中何考えてた?」

「えっ?」

「眠かった訳じゃないだろ」

見透かされてる……?

「別に…」

口籠もる美月の前に体を乗り出し、更に問い詰める。

「俺の事…かな」 

図星を差されて美月は真っ赤になった。
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