月に願いを
痩せてはいたが声には以前と変わらない張りがあり結姫は少し安心した。

「私は大事ない。清鷹こそ忙しいのに顔を見せてくれて嬉しいぞ」

内心とは裏腹な結姫の言葉をどう感じたか清鷹は黙って平伏する。

「本日は結姫様に出陣のご挨拶に参りました」

清鷹の言葉に結姫は袖の中に隠した拳をギュッと握った。

「……いつ出陣じゃ…?」

「この一月以内となりましょう」

「……そうか…。武運を祈る」

「ありがとうございます。この清鷹、命に代えましても東雲をお守りいたします」

「頼りにしている」

「はっ」

再び平伏した清鷹は顔を上げると結姫と視線を合わせる事なく部屋を辞した。





「結姫様。少し部屋を空けますが何かございますか?」

結姫の心中を察した志乃が声をかける。

「いや…」

「用が済みましたらすぐ戻りますので」

志乃はそう言って静かに部屋を出て行った。

一人残された結姫は流れる涙を拭う事もせず肩を震わせて、ただ清鷹の身を案じた。

「清鷹……」
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